コラム
暗号製品市場調査のご紹介
ITセキュリティセンターは2009年5月15日に米国(NIST)とカナダ(CSEC)で実施している暗号モジュール/暗号アルゴリズム試験制度(CMVP/CAVP)の試験機関として認定され、FIPS PUB 140-2に基づいた暗号試験を実施しています。また2010年3月12日にわが国の暗号モジュール試験及び認証制度(JCMVP)の試験機関として認証及び承認されています。
CMVPではこれまでに累計1000件以上の暗号製品が認証されています(「NVLAP から暗号試験機関に認定」)ご参照)が、わが国でも認証された暗号製品が普及することが期待されています。そこで暗号に関する2件の調査報告書を引用して国内の暗号市場についてご紹介します。
経済産業省が委託しNPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)がとりまとめた「平成20年度情報セキュリティ市場調査報告書 平成21年3月 NPO日本ネットワークセキュリティ協会」(以下「JNSA報告書」と呼ぶ)および独立行政法人情報処理推進機構が発表した「情報セキュリティ産業の構造に関する基礎調査2009年12月」(以下「IPA報告書」と呼ぶ)が公表されています。前者は国内での情報セキュリティ市場についての報告であり、後者は日本及び海外での情報セキュリティ産業構造に関する調査です。
JNSA報告書によると表1のように暗号製品は3つの製品群により分類され、これらの製品によって市場が形成されています。表にはそれぞれ暗号製品の例が記載されています。
表1 暗号製品の例(「平成20年度情報セキュリティ市場調査報告書」から引用して表を作成)
暗号製品の分類 | 暗号製品の例 |
---|---|
データ暗号化製品 | メール、文書ファイルなどのデータの暗号化 |
ハードディスク、フロッピーディスク、MO ディスク、USB メモリなどの外部記憶装置のデータを暗号化 | |
暗号化ミドルウェア | 暗号ライブラリ、組込用暗号モジュールなどシステム内などでのデータの暗号化 |
その他の暗号製品 | 暗号ライセンス、鍵管理システム等周辺製品、電子割符や電子透かし等 |
市場規模としては図1のように暗号製品の中ではデータ暗号化製品が大きく、2009年度は282億円となっています(JNSA報告書)。一方IPA報告書では表2のように情報セキュリティ市場をコンテンツセキュリティ対策製品などの“情報セキュリティツールと”セキュアシステム構築サービスなどの“情報セキュリティサービス”に2分しており2008年度前者は3,748億円、後者は3,520億円、合計で7,268億円としています。情報セキュリティツールはさらに「統合型アプライアンス」「ネットワーク脅威対策製品」「コンテンツセキュリティ対策製品」「アイデンティティ・アクセス管理製品」「システムセキュリティ管理製品」「暗号製品」の6つに分類していますが、「暗号製品」の市場規模は380億円であり“情報セキュリティツール”のおよそ10%を占めています(図2)。
図1 暗号製品の市場推移(引用「平成20年度情報セキュリティ市場調査報告書」)
表2 市場定義区分(引用「情報セキュリティ産業の構造に関する基礎調査」)
情報セキュリティツール | 統合型アプライアンス |
ネットワーク脅威対策製品 | |
コンテンツセキュリティ対策製品 | |
アイデンディディ・アクセス管理製品 | |
システムセキュリティ管理製品 | |
暗号製品 | |
情報セキュリティサービス | セキュリティコンサルテーション |
セキュアシステム構築サービス | |
セキュリティ運用・管理サービス | |
セキュリティ教育 | |
情報セキュリティ保険 |
図2 情報セキュリティ市場規模(引用「情報セキュリティ産業の構造に関する基礎調査」)
JNSA報告書によると「情報漏えい対策として、データ暗号化の重要性が強く意識されるようになってきており、記憶媒体への書き込みに際して暗号化を施す製品の需要を押し上げている。」との解説がありこの背景として安価な暗号製品の提供や暗号が情報漏洩対策として導入しやすい点をあげています。またゲーム機をはじめとする情報家電に組み込まれる暗号モジュールの増加も指摘しています。
この他にJNSA報告書では情報セキュリティツール及び情報セキュリティサービス市場の分析や海外との比較などが報告されています。またIPA報告書では日本、米国、欧州、韓国の情報セキュリティの産業構造、政策、技術について分析しています。
≪参照≫